京都までの顛末
高校同期の写真集ができたらしい。
偉いことに併せて写真展も開くとのことで、招待された。
彼は口が達者なんで、あれよあれよといううちに京都に行く口約束をしてしまった。
そして、幸い旅費には余裕があった。
切符を買ってしまえば、後はこっちのものだ。
to Kyoto…
東京と京都は案外近い。
東京から銚子や犬吠(関東の東の果て)と同じくらいの移動時間がかかると分かれば、思った以上に近い事がわかる。
とすると日帰りが可能というわけだ。
移動距離が大幅に違うから犬吠旅行の経済規模感で行くことはできないが、まあ日帰りできると思えば気楽なものだ。
当日昼
さて、東京駅に着いた。
当然駅弁を買う。エンガワの押し寿司だ。こればかりは譲れない。
1650円。たっかい。
手土産がてら東京のクラフトビールも買う。2本で600円。こっちもたっかい。
定刻通り到着する旨と手土産はビール以外無い旨連絡すると、「酒は飲まんなあ」と。
じゃあ新幹線で飲むことになるが、魚には日本酒か白ワインだよな…エンガワは脂が乗っているから辛口の日本酒が合うだろうな…
入鋏・出発

これに乗ったわけではない。
外国人観光客衆、夏休みの修学旅行衆をかき分けてホームに並ぶ。
新幹線内はとても涼しかった。座席に着いた途端エンガワ寿司を食べる。旅情は不要だ。

京都駅へ

目的の市役所近くの写真館に行くべく、バスに乗った。
しかし出発がやたら早い。どうやら違うバスに乗ってしまったらしい。
メカ・ディープリサーチを発動。目的のバスとは行き先が違うものの、京都市街地は概ね同じところを走ると分かった。
なんで同じバス停から違うところ行っちゃうかな…、なんて思うことはやめておいた。
寝過ごすと銀閣寺に着くらしい。スリルあるね。
心拍数をみたら120BPMだった。カフェインのせいだろう。
無事彼と落ち合った。複数人の展示らしく、知らないカメラマンもいた。
2年ぶりの再開、開口一番は「その髪色は似合ってないよ」だった。やはり衰えていないな、とニッコリしてしまった。
喫茶店で彼とコーヒーをしばき、色んな話をした。会社がどうとか、カメラがどうとか。
前合ったときはニコンの一眼レフだったが、今は富士フイルムのラージフォーマットだった。
思えば私はあの時からはキヤノンからシグマに乗り換えている。
互いに変人だ。変人とは特に古い企業では生きづらいものらしく、chatGPTに休みを貰う連絡をとらせたなんて話も聞いた。
でも彼は本を出した。休職中だというのに、ガッツがあるんだ。普通の人間だと、休職中はうなだれて薬を飲むだけだ。
私だって負けてはいない。休職中の人間にも「お前のほうが金を稼いでいる」と喫茶代をタカった。ガッツあるだろう。

上賀茂さまへ
上賀茂神社、叔母が私(と祖母)の身を案じて10年前から通い詰めてくれた神社だ。一度はお礼参りをしなきゃいけなかった。
御札も持ってきた。
困ったことに、目当てのバス停が見つからない。
京都市の交通網は複雑怪奇、20年近く前からアナログ手段で位置情報を特定し、QRコードをスキャンして何分後にバスが確認できていたらしい。
しかしバスとは交通手段の一つに過ぎない。歴史を語ったところで目の前の車が上賀茂神社へ向かうバスに変わってくれるわけではない。
たぶん20年前だったとしても迷っていただろう。
うろちょろしていたらバス停を見つけた。
なんとかバスに乗れたが、バスの中で脱水気味になる。
コークオン、助かる。初めての神社と会話
バス停を降りた直後に麦茶を買った。頭が痛くなってきたので、イッキ飲みをした。脱水の頭痛をアイスクリーム頭痛に変換ッ…
さて、10年ほどお世話になっていたはずの上賀茂さま。
鳥居前がロータリーになっていて、珍しい標識に興奮した。

鳥居も荘厳だった。

巫女の方に「古札納めたいんですが…」と言ったらナチュラルに京都弁で喋っていて感動した。これが旅情か…
思えば旅行で現地の人と会話をしたことがなかった。
なるほど秋葉原で外国人観光客に英語で話しかけられ「日本語使えよ」と思っていたが、確かに旅行では「自分が楽しむための旅行だから現地の言葉には興味がない」と思うのは真っ当だった。
バッチリ東京弁で話してきたから、巫女の方は「天皇返せよ」と思っただろうな。
ということを二礼二拍手一礼の間に考えていた。
しかし雲行きが怪しくなってきた。雨に降られるなんて無いよな…
雨と鴨川デルタ
ド夕立だった。
後で知ったのだが、参拝の後に雨が降るのは吉兆らしい。だとしたら本物の幸せ者だ。
傘を買おうとコンビニを探し歩いていた。ローカルのコンビニかと思って入ったらスーパーだった。思った以上に、その土地の息のあるラインナップだった気がする。この辺りから記憶が曖昧になってきている。
雨脚は弱まり、鴨川デルタを歩いていた。

出町柳から河原町三条まで、京都御所を抜けて
出川柳(鴨川デルタのあたり)から彼のいるギャラリーまで歩くと宣言した。
(メモ書き)御所まわりの民家、防火用のバケツが沢山あった。木造なのかな
疲れすぎたので御所を出たらバスに乗った。
記憶に残っている写真がいくつかあった。


ドトールとHP回復
記憶が曖昧になっていた。
京都に詳しい彼が言うには、宣言した距離を歩くのは大馬鹿者だったらしい。東京換算で言うと、秋葉原駅から靖国神社の距離だ。歩いていく距離ではないな…
土地勘がないというのはこういうところで効いてくるのか。
ド美味い中華、東華菜館
晩御飯を食べたら解散ということだったのだが、彼の案内何店舗か行ったが満席だった。やはり華金か。
こうなったらヤケだ、馬鹿をしよう、と彼が言う。歴史を感じる建物の前に連れられた。
「予約無し二名空いてるか聞いてこい」と言われた。
入口では門番のように燕尾服が待ち構えていた。彼曰く「こんな服で行くような店ではない」とのこと。アロハシャツとTシャツの二人組じゃダメらしい。このアロハ、気に入ってるんだけどな。
結果はOKだった。やっとメシにありつける。
日本最古のエレベーター
昔のエレベーターを想像してもらう。
新宿高島屋にある、案内人のいるエレベーター。ウグイスのような麗しい声で何階に向かうか案内をする。
いや、もっと昔を。
ドアがアミアミになっていて、手動でガシャンと締める。案内人というよりは運転手。ボタンとレバーを駆使して人を鉛直に移動させる。横に目をやると「指を差し込まぬように」と貼り紙がある。ぬ、か…。
そういえば鴨川沿いでこの季節なので納涼床があった。季節だね。
エレベーターはオーティス製、2000LBSと書いてあった。
ドレスコードは無いらしいが、賃金労働者の行くようなお店ではない事はひしひしと感じられた。
フロアにスーツの店員が立っており、たまにこちらの様子を伺ってくる。
至高の中華料理
このお店は彼が言うには一番美味しい中華とのことだった。
「八千円のコース料理のやつ二人前、あと烏龍茶ふたつ」と言う。
事前に晩御飯については「ファミチキでいいよ」と言っていたのだが…
自然と背筋が伸びる。アホらしいことを言えなくなる。
さっきまで「VRエロゲのクオリティとその体験から自明に導かれる致命的欠陥」について話していたが、こうなると「サックスがオーケストラにいない理由」なんて上品な話しか出来なくなる。吸われる話と吹く話だから、根っこから違う。
烏龍茶を飲みつつフォーマルな話を交わしていたら、前菜が来た。
コリコリしたやつとサクサクしたやつと、小さいお肉とか。カメラを取り出す程の心の余裕はなかった。
味は極上だった。もし依頼を受けて文句をいうとしたら、烏龍茶の茶葉くらいだ。
フレッシュで味が染みててすごいです 奥行きも底も見果てぬ味(2025 メカ外道)
何一つ過不足がなく満点だ 強いて言うなら美味すぎること(2025年 メカ外道)
満腹感すらも完璧にコントロールされていた。中華と言うと腹具合が分からず食べ過ぎてしまったと後悔するような事があるが、真逆だった。
前菜で程々に満たされ、心地よいバイブスのまま次へ次へと料理を出され、成仏できる。
食事と言う血糖値のトリップをハックして、ドーパミンをすべて出しつくすような…
スパイスとしてケシを入れていないと説明がつかない一品一品に加え、脳内を盗聴していないと説明がつかないコースのタイミング。
コース料理の真髄を見た。
前菜って「空腹の客を黙らせるために作り置きしておくお皿」じゃないらしい。
まるでシャブでもキメさせられたのか、あるいはシャブが高級料理で代替できるのか分からないが…
今まで1万円で様々な買い物をしてきたが、体験としてはTier 1だ。
ただただ愉快だった。
東華菜館、京都に行く際には予約を入れておくと良いだろう。

各々の道へ
彼とは合って離れてまた合ってだったが、京都は見どころのある街で、相応に外国人観光客が多い。
またの再会を約束して、帰路についた。