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3DプリンターとHome Assistantでヨーグルトを作る

可能性のある家具、3Dプリンター#

3Dプリンターブームが廃れてからしばらく経つ。

持っている、と言うと「じゃあハジキ作れるじゃんね」と言われる。その際は「失うものがまだありますので作れませんね」と真実ベースの嘘をつく。

さて、3Dプリンターが流行らなかったのは、やはりメンテナンスの厄介さと「何でも作れるわけではない」という現実だったかなと思っている。

産業サイドではかなり金型作成で楽をしているようだが、民生品(であり、さらに安くて古いもの)は実用に耐えるものではなかろう。

3Dプリンターで作った、良かったもの#

Sigma fp Lのグリップを作った。何度も失敗をしまくった結果、妥協の塊ができたが、まあ大きな文句無く使用できている。

甥の銘板(名前をそのまま押し出して印刷したもの)を作ったらとても喜ばれた。私と比べるとミニマリストな家庭に受け入れられたので、これは良かった。

スマホスタンドも何かと使えるが…、しかし「いつでも作れるから今は捨てちゃっていっか」で適当に作って・捨ててを繰り返してしまっている。

つまり、3Dプリンターは「あると何かと便利になる場面もあるが、部屋の一部を占有するほどの価値はないもの」といったところだ。

2026年時点で購入を検討している人にはすまないが、少なくとも多色刷りができるものでないと評価の土台には上がらない。家具が欲しいならIKEAに行くといい。

かつて話したこと:3Dプリンターはインキュベーターとして機能する#

観葉植物マニアの人に、ジャンクの3Dプリンターの購入を提案したことがある。

ヒートベッド(印刷台みたいなところ、印刷時に熱くさせて熱収縮を防ぐ役割がある)は温度を一定に保つ機能がある。

機種にもよるが、60℃は少なくとも保てる。

観葉植物の温室の土台にしてみては、と言ったが、あんまりしっくり来ていない様子だった。私も話していて「無駄すぎるな」と思った。

紆余曲折あり、思ったこと#

密造酒、主にミード(蜂蜜酒)のことを調べていたら、ヨーグルトの発酵を勧められた。

ヨーグルトの製作はどうやら合法らしい。お酒と違って年齢制限も依存症も無い、クリーンなものだ。

ミードとヨーグルトの違いは、PDCAを速く回せる。気になっていたミードのレシピ「JOAM」は3ヶ月かかるらしい。しかしヨーグルトは菌にもよるが、7時間程度でできるとのこと。

つまり、およそ100倍の回転速度だ。ドーパミン依存のZ世代に都合がいい。

知り合いは「アナログ温度計をカメラに見せて、位置関係をLLMに食わせて加熱・非加熱を選ばせる」というやり方だった。原始的なのか先進的なのか。

よこせ!ヨーグルトはこう作るんだ!#

健康に興味があった。夕飯のおかわりをヨーグルトでごまかせるとしたら、渡りに船だ。

早速ChatGPTに相談をした。こういう時にGoogleを使うことが大幅に減ったね。

家にあって、使ったもの#

  • Home Assistantのサーバー
  • ESP32
  • Anycubic i3 Mega(3Dプリンター)

これらの要件#

Home Assistantでは温度制御のプログラムをAIに組ませる。

ESP32は温度センサーのために使う。後述のラズパイとは別立てでESP32(マイコンとしての機能があればなんでも良い)を使用したほうが安全らしい。

i3 Megaは古い3Dプリンター。技術がオープン寄りなので扱いやすい。

ヨーグルト発酵のために買い足したもの#

  • Raspberry Pi 3B+
  • 温度センサー(DS18B20+)
  • 耐熱ガラス容器(密閉可能なもの)
  • 発泡スチロール製のクーラーボックス(350ml缶が6本入るもの)

これらの要件#

ラズパイはOctoPrintを焼いて使う。3Dプリンターを制御する。3~4が公式にサポートされている機種らしく、メルカリで買った。

3Dプリンターにも温度センサーはあるのだが、ヒートベッドへの直置きだと温度に差異が生じる。 容器の側面の高さ中央あたりにテープで貼り付けた。

耐熱ガラス容器は、耐熱であれば何でも良い。菌を扱うため、滅菌のために熱処理ができる容器にした。

クーラーボックスは断熱性を作るため。段ボールでもそこそこイケるが、見た目が危うい。

本命の牛乳とヨーグルト#

  • 牛乳(西友のPB、みなさまのお墨付き「おいしい牛乳」)
  • 明治ブルガリアヨーグルト(プレーン)

これらの要件#

牛乳は成分無調整のもの。本当は低温殺菌の牛乳が好ましいらしいが、まずは市場に流通していて安く手に入る高温殺菌のものを購入。

種菌を調べてそこから温度・時間を考える。初手R-1ではなく、まずはLB81菌で試す。プレーン味のほうが良い気がする。味付けはすべてが終わったあとにすること。

トライアルアンドエラーの始まり#

まずは水道水を加熱してオフセットを確認する。

まずは発酵温度42℃で6.5時間のダイブを目指す。

温度管理フローチャート

Antigravityにプロンプトを適当に投げたら、フローチャートを添えつつ温度制御システムを作ってくれた。

  1. 予熱段階ではベッド温度を50℃に上げる。
  2. 容器側面の温度センサー(実測)が40℃に達したら、45℃に下げて制御開始。
  3. ターゲット温度は42℃として、実測40℃を切ったら50℃に再加熱する
  4. 実測40~42℃では45℃に設定。
  5. 実測42~43℃では42℃に設定。
  6. 実測43℃を超えたら38℃にして冷却。
  7. 実測40℃到達から6時間半が経過したら、発酵終わりと判断してベッド温度OFF、通知。

第一世代完成。迷いの道へ#

まずは手っ取り早い成功体験を、とレンズヒーターを添えつつ段ボールで断熱を行なった。

段ボールを外すとこんな感じになる。

第一世代製造過程の見た目

しばらく待つ。

ログを眺める。下記画像、黄色がヒートベッドの温度、青が実測値。

第一世代温度管理ログ

途中からAmazonで購入した発泡スチロールのクーラーボックスが届いたので差し替え。ついでにレンズヒーターを外してみる。

序盤は温度が高めで安定(レンズヒーターありきなので)、中盤からは不安定になり、再加熱・通常加熱を行き来している。

出来たので、調べず冷やさずすぐ食べた。

40℃程度、6.5h。

あったかいヨーグルトはおかしい。でもちゃんと酸っぱい味がする。あったかいヨーグルトの味だ。

かくして得られたレシピと知見#

この冷蔵庫は共感されにくいらしい。冷食宅配サービスを使っているために、各種調味料も無い家だ。

ちょっと作りすぎちゃった。

インキュベーター上がりの冷空間

第二世代…40℃程度、6.5h。酸味少なく、クリーミー寄り。口ごたえはまろみがある。

第三世代…40℃程度。9h。酸味が程々に出ていてよろしい。口ごたえはまろみがあるが、第二世代よりはザラザラ。

第四世代…41℃程度。7.5h。比較的固まっていて、酸味少なめでクリーミー。ザラザラした口ごたえ。

こんな具合だった。レビューを行なったのは第四世代が朝に完成したその晩。最低でも10時間は冷えていることになる。

私の好みは第三世代の程々な酸味だった。おそらく長い間発酵させると良いのだろう。

第一世代の落胆の後、調べた。冷やさないとヨーグルト内部の分子のカラクリでホエイがヨーグルト内に残ってしまい、ヨーグルトらしさが無くてユルユルになってしまうらしい。4時間冷蔵庫で冷やせば十分にまともなヨーグルトになるらしい。

しかし、食感については明らかに冷却時間が長いほど良いように見える。

固まってホエイが出切るまで、何時間かかるかが現状不明だ。

ホエイが出切ると酸味も上がるようなので、9h発酵は酸っぱすぎてしまうかもしれない。

反省点#

42℃ターゲットにしたが、実測温度は40℃上下を行き来していた。第四世代は少し修正したが、イマイチだった。

実測と5℃程度のオフセットと熱容量分の遅延があるものと見られるため、もっとヒートベッドの温度を上げて大胆な制御をしてみようかと思う。

制御発酵のいいところ#

一般論として、成功した理由はすぐにはわからないが、失敗の理由はすぐに出てくる。

第一世代~第四世代までは失敗であったが、いずれも上質な失敗であった。

そしてヨーグルトも食べられるものが1Lある、200円程度で買った牛乳が、ヨーグルト数さじで1Lのヨーグルトに化ける。

バイバインか?

冷却もたかだか数日で安定するものと考えられるため、PDCAはミードと比較すると依然として回転は速い。

それに酒を選んでいたら酒税法に触れるし、ヨーグルトは健康になる(と思われる)。

このままi3 MegaにはPDCAを回しまくって、最強のヨーグルトメーカーとして余生を過ごしてもらおう。